メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」第30号
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メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」
30号 2010年9月3日発行
(毎週火金発行)
http://www.jugyo.jp/
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★目次★
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1 教室を〈優しく〉するために越えなければいけないいくつかのこと
「インクルージョン」チーム 副編集長
北海道・公立小学校 藤原 友和
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今号は、インクルージョンチームの副編集長、藤原友和さんの執筆です。
チームのライターが一巡したタイミングでもあり、これまでの議論を、ご
自分の学級の事例の研究を基に、整理して下さっています。2回連載の1
回目です。 (石川 晋)
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1 教室を〈優しく〉するために越えなければいけないいくつかのこと
「インクルージョン」チーム 副編集長
北海道・公立小学校 藤原 友和
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みなさん,こんにちは。夏休みは遥か以前だった気がするのに,秋は遥
か先のような気がしています。MM「学びのしかけ」【インクルージョン】
副編集長の藤原友和(北海道・公立小学校)です。
私は前回,「インクルージョンの発想から“学びのしかけ”を考えよう
とすると,〈学校的なもの〉との軋轢が生じることは避けがたい」が「そ
ういう視座を持つことなしに,〈個別のニーズ〉に寄り添うことはそもそ
もできないのではないか」ということを書きました。以下の通りです。
■引用開始
(略)お子さんは一人一人、みんな違います。座っていられなくてもいい
じゃないですか。黙っていられなくてもいいじゃないですか。そのお子さ
んが、ほかのお子さんとの関係の中で、共に学び合い、高まっていくなら
ば。そしてそのために私語や立ち歩きが必要ならば。必要な手助けとして
試みる価値はあるのでは、と思います(もちろん、その前提として一人一
人の教育的ニーズを把握してのことです)。
これは指導の放棄ではありません。また、「これくらいしかできないよ
ね」という消極的撤退でもありません。『授業づくりネットワーク』2009
年7月号の特集は「特別支援教育~指導と支援を合わせる~」でした。本
メールマガジン編集委員のメンバーが珠玉の原稿を寄せています。徹底的
に「個別の」ニーズに寄り添い、その上で「集団の中で」一人一人が大切
にされる方策を模索しています。
今、私(藤原)は、「模索」という言葉を使いました。
一人一人の差異を包み込んで「学びのしくみ」を考えていく作業には終
わりはありません。目の前の子どもから出発し、目の前の子どもに合わせ
て正解ではなく、最適解を探し続ける仕事だからです。
■引用終了
正解は存在しない。最適解を探し続けるのみだ──このように理想を語
っています。
理想は美しいのですが,現実はそううまくはいきません。教室が「優し
い」場所になるまでにはまだまだ遠い道のりで,毎日試行錯誤の繰り返し
です。
例えばこんなことがありました。「自分ルール」へのこだわりが強いC
君と,「勝敗」へのこだわりが強いE君との間のトラブルです。失敗談な
のですが,ただの失敗で終わらせないために何ができるだろうか……と考
えているところです。
【大状況】
低気圧が近づきつつあったある日,場所は蒸し風呂のような体育館です。
昼休みが終わった5時間目の体育で,くじ引きでペアを決めてバドミント
ンのトーナメント戦を行いました。くじ引きにすることは,授業開始時に
子どもたちの意見を聞いて決めました。特に不満などは出ませんでした。
授業最初の10分間は準備運動と縄跳びです。E君は一人だけ縄跳びを
忘れてきていました。罰ゲームとして「腕立て伏せ50回」を私と一緒に
やります。私は40回でダウンしました。E君は5回くらいでやめてしま
いました。シャレでやっていますので,そのことについては特に何も言い
ませんでした。縄跳びをしている間の3分ほどのことです。
その後は全員で協力してコートの設営です。壁にはトーナメント表が掲
示されています。何度も使えるように,チームは付箋に書いて貼り付けて
います。試合が終わるごとに勝者は上位進出,敗者は下位にトーナメント
に回ります。勝敗の報告を受けた私が,付箋を移動する,ということにし
ました。
1試合は5分間で,5分経過時点(ブザーが鳴ります)の得点により勝
敗を決します。勝敗に関係なく,全ペアに3回の試合が保障されています。
体育館にコートは3面取れます。14人で7つのペアがありますので,毎
回,一組のペアに試合がありません。彼らはタイマーのセットと審判を行
います。また,回によっては,試合が1面,その他2面は練習用に開放,
という場合もあります。
私はワイヤレスマイクを片手に歩き回り,実況中継のように応援したり,
危険なプレーや,乱暴な行為がないように3つのコートを見て回りました。
つまり,1コートは相互審判によるプレーが行われている状態になります。
お互いの判定ですので,双方の納得いくように進めていく必要があります
(もっともトラブルの起こりやすいエリアと言えるでしょう)。
【小状況】
実際にはトラブルは審判のいるコートで起こりました。
残り時間30秒というところで,AチームとBチームの点差は10-8。
Aチームには「自分ルール」へのこだわりが強いC君がいます。運動能力
の高いDさんとのペアです。Bチームには「勝敗」へ徹底してこだわるE君が
います。運動がやや苦手なFさんとのペアです。
E君の打ったスマッシュを,C君がぎりぎりで拾います。シャトルは見事
にBチーム側に返ります。見応えのある攻防が繰り広げられると思ったその
刹那──
E「ワンバンだよ! 着いた,着いた!!」血相を変えてE君がどなります。
C(え,僕は拾ったと思ったのにな。)
E「ずるいぞ。反則負けだ。」
C(ずるはしていない。僕は拾ったと思ったから続けただけだ。)
E「あ~ぁ,ずるされた。」
C(ずるなんてしてないよ。)「もういい!!! そっちの勝ちでいいよ!」
たとえ,その一点が入っていたとしても,その時点でスコアは10-9
なわけですから,Aチームが勝っていることになります。残り時間もわずか
数十秒です。しかし,勝敗に強いこだわりを持つE君は,悔し紛れに「シャ
トルが床に着いてた!」「反則負けだ!」と連呼してしまったのですね。
「自分としては拾った」と思っているC君は納得がいきません。審判は「セ
ーフ」との判定でしたが,感情的にもつれてしまったE君とC君はもはや聞
く耳を持ちません。
E君は「相手が認めたのだから,勝ちは勝ちだ。」と言って次の試合に行
ってしまいますし,C君は器具庫の奥に入り込んでDさんがいくら呼んでも
出て来ません。幸い,組み合わせ上,1試合分の空きが生じていて,相手
チームに迷惑をかけることにはなりませんが,「みんなでバドミントンを
楽しもう」というめあてからはかなりはずれた事態になってしまいました。
しかも,これらのことは私の目の前で起こったわけではありません。私
が別のコートを回っているうちに起こり,しかもゲーム終了間際だったの
で,トーナメント表の処理等で報告を受けているうちに発見が遅れてしま
いました。次の試合が始まってから,器具庫にたたずむC君を見つけ,Dさ
んに事情を聞いて分かった,という次第です。
この場合,何を優先し,どんな順番で解決を図るべきだったのでしょう
か。
そもそも,このようなトラブルが起きないように仕組みづくりを行い,
授業中も細心の注意をはらうべきだという意見もありましょう。しかし,
既に起こってしまったトラブルです。ここから何が学べるかを考えて見た
いと思います。
少なくとも,この場での対応として,以下の各点が想定されます。
1 全体のゲームの円滑かつおだやかな進行
2 器具庫に入ってしまったC君への対応
3 器具庫内の安全確認
4 感情的に自己中心的なふるまいをしてしまったE君への指導
5 C君のペアであるDさんのケア
6 (指導を受ける)E君とペアを組んでいる,Fさんへのケア
7 判定したのに聞き入れられなかった審判のG君への言葉がけ
8 C君が気持ちを落ち着けるまでの時間の確保
9 どのようにこの場をおさめるかについてのDさんとFさんの諒解
10 個別対応の間の安全確保(熱中症予防の給水や汗の始末を含む)
まだまだあるのかも知れませんが,このときに私が考えたのは以上のよ
うなことでした。
さて,これらは「対応すべきこと」と考えられますが,「対応しない」
という選択肢もあります。もちろん,安全に関わる3・10は絶対に外せ
ませんが,子どもの育ちや,その時間までの生活の仕方によって,例えば
5・6・7あたりは相対的に「軽い対応」や「対応なし」にすることもあ
るかもしれません。
いずれにせよ,トラブルは成長のチャンスです。このことを機会に,そ
れぞれの課題をそれぞれにクリアできれば最善手。クリアできないまでも
「そこが自分の課題なのだ」と自覚されれば収穫はあり。最悪なのは相互
不信のみを残してしまうこと(C君・E君だけではありません。Dさん・Fさ
んや他の子どもたちも含みます)。
実際には,まず3・5・2の順に対応しました。
その詳細は,また次回にご報告します。
授業づくりネットワーク誌
→ http://www.gakuji.co.jp/magazine/network/index.html
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【編集後記】
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藤原さんは、私の10年来の研修仲間で、中学校と小学校の両方の教職
経験を持つ方でもあります。今号は、その藤原さんの学級での実際につい
て、藤原さんらしい内省と分析が展開されています。
私たちの日常は、まさに「試行錯誤」の連続ですね。
藤原さんのこの後の対応の実際、そして、その対応における「試行錯誤」
と内省と分析、ぜひ読みたいなあと思います。次回号が、楽しみです。
「学びのしかけ」メールマガジンは、ライター陣が一巡し、二巡目に入
ります。これからの教室に新しい風を吹き込むための「学びのしかけ」づ
くりは、これからいよいよ正念場です。
次号は、ワークショップチームから、副編集長の加藤恭子さんのご執筆
号です。
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メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」
第30号(読者数1586) 2010年9月3日発行
編集代表:上條晴夫(haruo.kamijo@gmail.com )
ぜひ、読者のみなさんの声をお聞かせ下さい!
編集長:石川晋
副編集長:長瀬拓也・加藤恭子・藤原友和
登録・解除 http://www.mag2.com/m/0000158144.html
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